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飲食店の損益分岐点の計算|原価・人件費・家賃から必要売上を出す

飲食店の損益分岐点を、固定費と変動費に分けて計算する方法を解説。必要売上を客数・客単価へ戻し、開業計画の実現可能性を確かめる手順も整理します。

飲食店の売上目標を「月300万円」と置いても、その数字だけでは足りません。原価、人件費、家賃、決済手数料などを払った後に利益が残るのか。席数、営業時間、客単価から見て、その売上を実際に作れるのか。両方を確かめて、初めて目標が計画になります。

その境目を示すのが損益分岐点売上高です。売上と費用が等しくなり、利益も損失も出ない売上高を指します。ただし、計算式へ数字を入れるだけでは判断できません。費用の分け方が違えば結果が変わり、税金、借入返済、設備更新まで自動的に賄えるわけでもないからです。

この記事では、飲食店の月次計画を例に、固定費と変動費の分け方、損益分岐点の計算、客数への戻し方、開業前に見直す順番を整理します。

損益分岐点は「赤字にならない最低売上」の目安

損益分岐点売上高は、次の式で計算します。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 - 変動費率)

変動費率は、売上に連動して増減する費用を売上高で割った割合です。1 - 変動費率は限界利益率と呼ばれ、売上から変動費を引いた後に、固定費と利益へ回せる割合を表します。

たとえば、月の固定費が150万円、変動費率が40%なら、限界利益率は60%です。

150万円 ÷(1 - 0.40)= 250万円

月商250万円のとき、変動費は100万円、残る150万円で固定費をちょうど賄います。月商250万円を超えた分の60%が、計算上は利益へ寄与します。反対に下回れば赤字です。

ここで注意したいのは、損益分岐点は費用の前提を置いた試算だということです。家賃や人件費が変われば必要売上も変わります。開業前は一つの数字を確定値にせず、標準、慎重、悪化の三つの条件で比べます。

飲食店の費用を固定費と変動費へ分ける

固定費は売上が増減しても短期には大きく変わりにくい費用、変動費は売上や客数に応じて増減しやすい費用です。

区分主な費用分けるときの注意
固定費家賃、正社員の固定給、リース料、減価償却費、定額のシステム利用料営業日数を減らしても発生するかを見る
変動費食材、飲料、包材、決済手数料、売上連動のロイヤリティ売上高や注文数に連動する割合を確認する
混合費アルバイト人件費、光熱費、販促費、配送費固定部分と売上・時間に連動する部分へ分ける

人件費をすべて固定費、またはすべて変動費と決めつけると、実態から離れます。店長や正社員の固定給は固定費に近く、来客予測に応じて調整するアルバイトの勤務時間は変動費に近い性質があります。ただし、最低限必要な配置人数は、売上が落ちてもゼロにはできません。

光熱費も同じです。基本料金や冷蔵設備の常時稼働分は固定的ですが、来客数、営業時間、季節で増える部分があります。正確に分けにくい開業前は、似た業態の実績、勤務時の記録、機器仕様、見積もりを使い、どの費用をどちらへ置いたか残してください。

月次の損益分岐点を5手順で計算する

1. 月の固定費を集める

説明用に、次の店を想定します。

固定費月額
家賃・共益費30万円
正社員給与と会社負担分85万円
リース・減価償却15万円
通信・システム・保険8万円
販促費の固定枠7万円
その他の固定的な費用5万円
合計150万円

個人事業で店主が働く場合も、自分の生活費を無視すると継続できる売上を小さく見積もります。会計上の費用区分とは別に、家計へ必要な金額を資金繰り表へ置いてください。

2. 変動費率を出す

売上に対する割合で整理します。

変動費売上比
食材・飲料原価32%
決済手数料3%
売上に連動する人件費4%
包材・消耗品1%
合計40%

食材原価率は全メニューを同じ率にせず、販売数を踏まえた構成で見ます。原価率の低い飲料が多い店と、食材比率の高い料理が中心の店では、同じ客単価でも限界利益が変わります。

3. 限界利益率を計算する

1 - 40% = 60%

売上100円のうち60円が、固定費と利益へ回る計算です。

4. 固定費を限界利益率で割る

150万円 ÷ 60% = 250万円

この前提では、月の損益分岐点売上高は250万円です。

5. 目標利益を加える

月30万円の営業利益を目標にするなら、固定費へ目標利益を加えて計算します。

(150万円 + 30万円)÷ 60% = 300万円

赤字を避けるだけなら250万円、営業利益30万円を残すなら300万円が必要です。借入返済は元本部分が損益計算上の費用にならないため、利益目標とは別に資金繰りでも確認します。

必要売上を客数と客単価へ戻す

月商250万円が必要でも、店の席数と営業時間で実現できなければ計画は成立しません。営業日数25日、平均客単価2,500円なら、1日当たりの必要客数は次のとおりです。

250万円 ÷ 25日 ÷ 2,500円 = 40人/日

目標利益を含む月商300万円なら48人/日です。

ここから昼と夜、平日と週末へ分けます。30席の店で1日40人なら一見達成できそうですが、昼に8割が集中する、夜は予約中心、平均滞在が長いなどの条件で難しさが変わります。

確認項目計画へ入れる数字
客単価時間帯別、店内・持ち帰り別の平均
客数平日・週末、昼・夜の組み合わせ
席数・回転実際に使える席と平均滞在時間
営業日定休日、仕込み日、季節休業を除く
稼働率開店直後から満席になる前提を置かない

必要客数が現実的でないときは、単に売上目標を下げるのではなく、固定費、メニュー構成、営業時間、席数、物件を見直します。家賃を下げても客数が見込めない立地なら、別の問題が残ります。

三つの条件で資金が持つか比べる

開業計画は、標準の一案だけでは足りません。少なくとも次の三条件を作ります。

条件売上・費用の置き方確認する判断
標準調査と経験から最も説明しやすい値目標利益を残せるか
慎重客数を下げ、原価・人件費を上げる損益分岐点をいつ超えるか
悪化工事遅延、集客遅れ、原価上昇を置く運転資金が何か月持つか

損益が黒字でも、入金より支払いが先なら現金は不足します。敷金、工事費、厨房機器、採用費など開業前の支払いと、開業後の赤字期間を含めて運転資金を見ます。開業資金の全体は飲食店の開業資金、融資へ出す事業計画は日本政策金融公庫の創業融資で整理しています。

損益分岐点を下げるときの順番

損益分岐点を下げる方法は、固定費を下げるか、限界利益率を上げるかの二つです。しかし、費用を削れば必ず経営が良くなるわけではありません。

  1. 売れ筋と死に筋を分け、メニュー別の原価と販売数を見る
  2. 廃棄、過剰な仕込み、値引きの発生理由を記録する
  3. 時間帯別の客数に合わせて勤務配置を直す
  4. 利用されていない定額サービスや契約を見直す
  5. 客単価を上げる場合は、数量が落ちたときの売上も試算する
  6. 家賃や設備費が重い場合は、開業前に物件・規模へ戻る

最初から人員を削りすぎると、提供速度と接客が落ち、再来店を失うことがあります。原価率だけを下げれば、商品の価値まで下がるかもしれません。数字の改善と、店を選ぶ理由を同時に残します。

よくある質問

Q. 飲食店の損益分岐点比率は何%なら安全ですか?

一律の安全値はありません。業態、家賃、人員、営業時間、借入条件によって異なります。自店の固定費と変動費から計算し、売上が下振れした条件でも資金が持つか確認してください。

Q. 借入金の返済額は固定費へ入れますか?

利息は費用ですが、元本返済は損益計算上の費用ではありません。ただし現金は減るため、損益分岐点とは別の資金繰り表へ月々の元利返済額を入れます。

Q. 開業前で原価率が分からない場合はどうしますか?

メニューごとに食材の使用量と仕入価格から標準原価を出し、想定販売数で加重平均します。仕入価格の上昇、廃棄、まかないなども別条件で加え、開業後は実績へ置き換えます。

計算結果を開業判断へつなげる

損益分岐点は、売上目標を客数と客単価へ戻し、店の容量と費用構造を同じ表で確かめるための道具です。まず固定費と変動費を分け、赤字を避ける売上と目標利益を残す売上を計算します。次に一日当たりの必要客数へ戻し、席数、回転、営業日で実現できるかを見ます。

計算で無理が出た場所は、開業後の努力だけで埋めません。物件、規模、メニュー、人員、資金調達へ戻り、契約前に直します。

参考にした一次情報

この記事は2026年8月11日時点の公開情報に基づく一般的な計算例です。会計・税務上の区分や必要資金は、事業形態と契約によって異なります。個別の計画は税理士、金融機関、商工会議所・商工会などへご相談ください。