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飲食店のHACCP計画|開業前に決める衛生管理と記録の残し方

飲食店のHACCP計画は、メニューを工程別に分け、確認方法・異常時対応・記録を一体で決めることが要点です。開業前に使える判断表、記録の残し方、管轄窓口への確認点を解説します。

飲食店のHACCP計画では、自店のメニューを食材の受入れ、保管、下処理、加熱、冷却・再加熱、提供という工程に分けます。そのうえで、各工程の「いつ、何を確かめ、異常ならどうするか、何を記録するか」を一組で決めることが要点です。

開業前の目標は、営業中に迷わず判断でき、後から振り返れる計画を作ることです。では、定食やコースのように複数の料理が組み合わさるメニューを、どの単位で計画表へ載せればよいのでしょうか。刺身、加熱料理、加熱後に冷却する料理など、温度管理の工程が異なる構成要素に分けると、自店に合う計画になります。

※制度・資料の内容は2026年9月21日時点で確認しています。地域ごとの手続きや運用の詳細は、店舗所在地を所管する保健所等へ確認してください。

飲食店のHACCP計画は「作成後の運用」まで決める

厚生労働省のHACCP案内(新しいタブで開きます)によると、原則としてすべての食品等事業者がHACCPに沿った衛生管理の対象です。営業者が行うこととして、衛生管理計画の作成と従業員への周知、実施状況の記録・保存、定期的または工程変更時の検証と見直しが示されています(2026年9月21日確認)。

開店前の計画表には、営業時の実施、結果の記録、同じ異常が繰り返されていないかを確かめる振り返りまで含めます。従業員、メニュー、原材料、納入業者、設備・器具が変わったときも見直しの契機です。

小規模店の準備は、飲食店開業の流れと準備手順の中で、メニュー決定や厨房設備、仕入先、スタッフ教育と並行して進めます。設備が決まる前に確認方法だけを書いても実行できない一方、開店後に考え始めれば、異常時の判断が担当者任せになるからです。

メニューを3つの管理グループに分ける

厚生労働省の小規模な一般飲食店向け手引書(新しいタブで開きます)は、従業員数が数名程度の事業者を対象とし、温度管理が必要なメニューを次のように分類しています(改訂第3版、2024年1月15日時点)。

  • 非加熱で冷たいまま提供するもの
  • 加熱して熱いまま提供するもの
  • 加熱後に冷却するもの

横浜市の飲食店向けHACCP資料(新しいタブで開きます)も、複数の管理が混在するメニューの分類を示しています(2026年9月21日確認)。この分類を使うと、「定食」という一つの名前の中にある管理の違いが見えます。刺身や冷奴に当たる構成要素、加熱して提供する構成要素、加熱後に冷却する構成要素を別々に表へ載せます。メニュー名だけで一行へ集約すると、何を確認して「良」としたのかが曖昧になるためです。

非加熱で冷たいまま提供する刺身・冷奴の例では、冷蔵庫から出したらすぐ提供し、冷たくない場合は提供しないか加熱用へ回します。加熱料理では、火力・時間・肉汁・見た目、油温・揚げ時間・一度に揚げる数量など、料理に合う確認方法を決め、問題があれば加熱を延長するか提供しません。工程ごとの違いを確認方法へ反映させます。

受入れから提供までをつなぐHACCP判断表

下表は、手引書の記載例を基にした運用案です。「下処理で分類が未確定なら先に進めない」「提供前に各構成要素を確認する」という行は、記録漏れを避けるための編集部の提案で、手引書に定められた独立の義務ではありません。「工程」「確認時点」「正常条件」「異常時対応」「記録」を結び付けるために設けています。

まずメニューを構成要素に分け、各要素が通る行だけを拾います。次に正常条件を自店の設備と調理方法に合わせ、条件を外れたときに「次へ進めるか、止めるか」が一つに決まる表現へ直します。最後に、その判断を後から確かめられる記録欄を対応づけます。

工程いつ確認するか確認対象・正常条件異常時の対応残す記録
原材料の受入れ納品時外観、におい、包装状態、期限・保存方法の表示に問題がない問題のある原材料は返品・交換良否、問題の内容、取った措置
冷蔵・冷凍保管計画で決めた時点庫内温度を確認。手引書の例は冷蔵10℃以下、冷凍マイナス15℃以下原因確認、設定温度の再調整、故障時の修理依頼。食材の状態に応じて使用しない、または加熱して提供良否、冷蔵・冷凍庫の実測温度、原因、措置
下処理作業前に計画を確認するときその構成要素が非加熱、加熱、加熱後冷却のどれに進むか特定できている分類と確認方法が決まるまで次の工程へ進めない対象品、分類、担当者
非加熱で提供冷蔵庫から出した後冷たい状態ですぐ提供できる冷たくなければ提供しない、または加熱用へ回す良否、対象品、提供中止などの措置
加熱して提供加熱中・加熱終了時料理に応じて決めた火力・時間・肉汁・見た目、油温・揚げ時間・一度に揚げる数量などを満たす加熱を延長する、または提供しない良否、確認結果、加熱延長・提供中止などの措置
加熱後の冷却・再加熱加熱終了時から、冷却条件を確認する時点まで手引書の例では、加熱終了後2時間以内に20℃以下へ到達している。再加熱する料理は、その後の確認方法も料理ごとに計画へ記す冷却条件を達成できなければ提供しない良否、加熱終了時刻、実測温度、提供中止などの措置
提供前盛り付け・提供前各構成要素が計画した確認を通過している条件を満たさない構成要素は提供を止める対象品、異常内容、最終判断、担当者

温度と時間は、厚生労働省の手引書にある記載例であり、すべての料理に一律で当てはめる数値ではありません(2024年1月15日時点)。各数値をどの料理の、どの工程で確認するのかまで対応づけてください。たとえば「加熱終了後2時間以内に20℃以下」は、加熱終了時刻と到達時刻、実測温度を同じ記録で追えるようにします。

迷いやすいのは、異常を見つけた後です。「注意した」「様子を見た」という記載では、担当者ごとに結論が変わります。受入不良なら返品・交換、加熱不足なら加熱延長または提供中止、冷却条件を満たさなければ提供中止というように、食材を次の工程へ進めるか止めるかを書き切ります。異常時の分岐まで決まっていることが、計画を現場の判断に変えます。

記録表は「良・否」の先まで残す

日々の記録では、計画どおりなら「良」、できなければ「否」を付けます。「否」のときは、後から経緯を追える情報も必要です。手引書と自治体資料は、問題の内容、できなかった理由、実施した措置を特記事項へ残し、冷蔵庫・冷凍庫については実測温度も記録する例を示しています(2026年9月21日確認)。

開店前に、記録欄が次の情報を受け止められるか確かめます。

  • 実施日と確認した工程
  • 良否と、温度管理では実測温度
  • 異常の内容と原因
  • 返品、使用中止、加熱延長、提供中止など実施した措置
  • 記録した担当者と、後から確認した人

この項目がそろうと、記録から計画の修正点を探せます。可能であれば、日々のチェック担当者とは別の店主等が週ごとに記録漏れと異常時処置を確認し、評価とサインを残す方法が手引書に示されています(2024年1月15日時点)。

同種の問題が繰り返されていれば、個人の注意だけで終わらせず、確認時点、作業方法、設備や納入条件など、計画のどこを変えるか検討します。一連の記録は1年間程度保管する目安です(2026年9月21日確認)。保管場所と、誰が確認できるかも開業前に決めておきます。

開業前に一度、実際の動線で試す

紙上の表が完成したら、予定するメニューを構成要素に分け、納品から提供まで表の行をたどります。営業中の動線と担当者で実行できるか、異常を想定したときに措置と記録先を迷わず選べるかを確かめます。

  • すべての構成要素が、非加熱・加熱・加熱後冷却のいずれかに整理されているか
  • 各工程に、確認する時点と方法が書かれているか
  • 異常時に、使用・提供を止める条件と取る措置が明確か
  • 「否」の理由、措置、実測温度を書ける欄があるか
  • メニュー、仕入先、設備、担当者が変わったときの見直し役が決まっているか

一つでも判断が止まるなら、その箇所が計画の修正点です。開業準備全体の許認可や担当者を整理するときは、飲食店開業に必要な資格・許可の確認方法も合わせて確認してください。

地域の様式は所管する保健所へ確認する

厚生労働省の手引書は、自店の衛生管理を組み立てる中心資料になります。一方、自治体が公開する資料や様式は、その地域の事業者を支援するためのものです。神奈川県のHACCP講習会用資料(新しいタブで開きます)も、詳細は事業所を所管する保健福祉事務所等へ相談するよう案内し、県外事業者には事業所を所管する保健所等への相談を促しています(2026年3月3日時点)。一つの自治体の様式を全国共通の手続きとして扱わないでください。

定食やコースは、温度管理の異なる構成要素に分けてください。受入れから提供までの各行に、確認時点、正常条件、異常時対応、記録を結び付けます。判断表を実際の動線で試し、異常の理由と措置を記録から追える状態が、開業前に整えたい自店のメニューに合うHACCP計画です。